現代社会論としてのスピリチュアリティ研究   

伊藤雅之(愛知学院大学)


 1980年代後半以降、欧米において「スピリチュアル」や「スピリチュアリティ」の語が多くの人々の間で盛んに用いられるようになってきている。「宗教」には違和感を持ちつつも「スピリチュアリティ」には関心を持つと主張する人々、反対に「宗教」のエッセンスとして「スピリチュアリティ」を大切にしようとする信仰者、さらには教育や医療や社会福祉の現場においてスピリチュアルな何かを伝えようとする専門家など、この語は使用する人によっても、使う場面においても若干異なるようである。WHO(世界保健機構)が従来の「健康」の定義である「肉体的」「精神的」「社会的」に幸福な状態であることに加え、「スピリチュアル」な次元も健康定義に加える試案づくりをしたこと(現在は保留となっている)も手伝って、この語は主流文化においてもある種の市民権を獲得したといってよいだろう。

日本では、「スピリチュアリティ」の語はまだまだ一般に馴染みのない用語である。しかし、大型書店の精神世界/ニューエイジのコーナーに行くと、タイトルにこの語を使用した書籍を多く見かけるし、医療や教育などの現場では欧米と同様にスピリチュアリティ文化は浸透しつつあるように思える。こうした現代人の新しい社会意識を理解するために、社会学においてもスピリチュアリティ研究が徐々に行われるようになってきている。本報告においては、「スピリチュアリティ」への関心が高まる社会状況に着目し、現代社会論としてのスピリチュアリティ研究という視点からの考察を試みたい。

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